「なんか恥ずかしいなー…せっかく翔真に会えたのに怒られて怒鳴られてる姿しか見せられてないなんて。」

背を丸め顔を隠し、翔真が知っている強気なユリはどこへやら……彼女は深く憔悴しきっていた。

「俺もマイクさんに相当しごかれてるし。」
「…それは翔真がサボるからでしょ。」
「俺も普段はけっこう監督に怒鳴られっぱなしだよ。」
「…それも翔真が手を抜くからでしょ。」
「・・・。」

「ふふっ。…ふふっ」
励ましてるつもりが逆に突っ込みに代わるユリの顔には、思わず笑みが溢れると翔真もホッとしたように、

「ユリはここで負けるような女じゃないと思うよ。」

その言葉を残して、そっと立ち去ってしまった。

「ずるい…分かってるくせに…」

私が、あと五秒で泣くのも、分かってるくせに。
このタイミングで立ち去るのが、翔真らしい。

ユリは泣き顔のままの顔をあげると、立ち去ってく翔真の後ろ姿に思わず、
「……ッ……」
行かないでと側にいて、と口にしそうになっていた。


「バカだな……あたし。マジ」

(もう甘えられる人じゃない。でもあの空気感が…たまらなく愛しい。)

破裂しそうな愛しさと、期待してもむなしさだけの残る現実にユリはまた深くうつ向いた。