「いいか?菅原芽依をただのバカ女だと思うな。」
千葉代表との試合開始五分前、ベンチに東京女子代表が集まり、神崎監督の言葉に選手達は静かに耳を傾けた。
「田島、菅原を止めんのはお前だからな。」
「はい。」
体力にもディフェンスにも自信のある田島だからこそ任せられることだった。
「菅原・・・??誰だたっけ?」
その名前にピクッとする未茉に、
「だーかーら千葉代表の菅原芽依だよ!!」
一同に苛立つような突っ込みと共に睨まれると、
「小さいくせにアイツの意表をつくドリブルからのゲームメイキングは目を見張るものがある。」
(向こうは寄せ集めのチームじゃなく、市立前橋のメンバーだからな。予選を勝ち抜いた連携能力は高い。しかし今年の一年はバカばっかりだが、能力だけは無駄に高いな・・・。)
へらへらしている未茉を見ながら冷ややかな視線の田島。
「基本的にうちが高さや個人能力では劣らなくても、千葉は菅原が作るリズムのパス&ランで繰り広げられる攻守共にチーム力がかなり高い。」
「ん…ああっ!!!あの翔真の骨抜き女か!?」
見覚えのある女とその名前に手を叩くと、
「あれ…?そういやぁーあの女じゃないって言ってたような・・・」
「あほっ!!未茉覚えてへんのかっ!?中学の時あの女に何点許したと思うとんのやっ!!」
「そう。アイツは自分でもガンガン3ポイント放つからな。石井、静香、リバウンドは死ぬ気で絶対に取れ。」
「「「はいっ!!!」」」
神崎監督がそう言い放つと、目を見合わせて拳を突きだし大きな返事を体育館に響かせた。
「よしっ行くよ!!」
「「おっー!!!」」
威勢のいい田島の掛け声についていくように、スタメンの未茉、静香、石井がコートに入ってく。
ユリはそれをどことなく遠い目で見つめ、立ったままコートの中の五人を心配そうに息を飲む神崎監督の緊張感漂う背中を見つめていた。