「「きゃぁあああああっ!!拓哉ぁぁあっ」」

東京で一番大きなサッカーグランドの大成高校はここ数年全国優勝する程、サッカー名門高として名高く、そのエースはもちろんイタリアでも活躍中の荻山拓哉だった。

彼の帰国後の試合ということもあり、観客席は超満員で全国からのファンも押し寄せ、マスコミはもちろんプロのチームの関係者までもが埋め尽くされていた。


ーーバサッ…!!
彼が得意のドリブルからの豪快なミドルシュートを決めると、
「「うぁぁああっ!!」」
何万人もの収容可能なグランドが揺れるほどの悲鳴のような声が飛んできた。

「ナイス!!オギタク!!」
仲間達が駆け寄り抱きつくも、

「未茉さぁぁあん…」

未茉を招待した招待席を見上げても、お留守番のルリちゃん人形が座ってるだけで、彼女の姿はなく涙ぐんでしょんぼりしている。

「おいおい拓哉・・・」
仲間達がひきつって唖然としてると、
「ツンデレラ試合なんだろ?しょーがねぇじゃん。終わったら体育館見にいけよ。」
そう走りながらフォローすると、


「…あ…っ」

そこへルリちゃんの席の元へ走ってやってきた未茉がオギタクの視界に入り、


「あっ、おーいっ拓哉ぁー!!」

聞こえないはずだが、自分と目が合ったのが見えると、未茉はルリちゃん人形を抱き上げて大きく手を振る。


「みっ未茉さぁぁぁあーーん!!!」


オギタクは急に立ち止まり、未茉の一声でふにゃっと気が抜けたように柔らかな顔となり、

「お・・・おい、オギタク!?」
「おい走れ走れボール行ったぞ!?」
仲間達は急に動かなくなった彼に焦り、更には…


「監督っ!!すみません!交代で!!」
勝手に突然コートを抜け出してベンチにやってきて、
「はぁぁあっ!!?」
何を言っちゃってるんだ!?と度肝を抜くと、
「監督っ!すみません!出ます!!」
「はぁぁあっ!?」
「また後で!!後半出れたら出ます!!」

「あ、おいっ!!こら待てぇっ!!待てぇぇ拓哉ぁぁあ!!お前がいないとダメだろぉおお」
マスコミ達もベンチの選手も監督も立ち上がって止めるも、飛び出してった彼の足には追い付かず・・・。

彼は、未茉の元へまっしぐらに向かった。