「おはよー。」

男子の東京代表の工藤監督に続いて神崎監督が体育館に重苦しい表情で入ってきた。
「「おはよーございます!!!」」
男女選手一同が声を揃えて挨拶すると、
「……!」
神崎監督は観客席に座るユリの存在に気づき見上げると、ユリはとっさに気まずそうに目をそらした。

「白石が呼んだみたいです。」
それに気づいた田島がそっと神崎監督の耳元で告げると、
「そう。」と静かに頷き、すぐに切り替えたように手を叩き女子を集めた。

「国体の初戦の相手が決まった。」

「「……!!」」
一同は一斉に顔をあげ、対戦相手の都道府県の名が分かる緊張の一瞬に、


「十年連続優勝中の愛知だ。」


「「「ーーー!!!」」」
初戦からまさかの絶対的王者との対戦に、
「・・・終わった・・・。」
と嘆く静香に、
「コラッ!!」
どっつく石井。

「……初戦から名古屋第一かよ。」
田島はそう渋い顔でため息ついた。大成女子はインターハイの準決勝でエマ率いる名古屋にあたり完敗している。

「愛知…」
「ついてない。」
口には出さないもののすでに負け確定したかのような初戦から一気にのしかかる重圧に女子達は不満を露にした。

「ほぉらっ!!そんな顔するな!!!」
沈んだ空気を変えるようにパンパンッ!!と神崎が手を叩きながら、

「いい?今回のお前ら東京女子は優勝狙えるメンバーよ。決勝が東京と愛知だと思ってたけどこれに勝てればあとはどってことない!!間違いなく優勝だ。」

「愛知聞いて喜んでるのは未茉くらいやないか・・・?って未茉?あり未茉ー?!」
強い相手となると跳び跳ねて喜ぶはずだが・・・