「で。結局、未茉の本命ってどっちなの?」

未茉の隣にきた駿がボールを転がしながら優しくため息つきながら尋ねた。

「ん?本命?」
「あの二人だよ。」

指差す先には、そこだけまるで空気が違っていた。緊迫した張りつめた空気に包まれていて会場中の視線を集めている。

互いの出方を確かめるように見合い、しっかりと腰を落とす二人。


「健の1対1なんて簡単に止められると思うなよ。翔真…」
同世代のマイクは、高さがあるのにも関わらず中学時代からやられっぱなしの異次元の才能を持つ健の凄まじさを知っていた。

健はじりじりと駆け引きを楽しむかのように、床から自分の手に吸い付くボールの音を翔真の目を見ながら微笑む。

来るな…とその単調の音の違いを耳を澄まして翔真は、リングへ向かっていく、ドライブを選択すると思い、警戒をしステップバックしようとするも、


「ーー!」

抜くぞーーという意識をフェイントし、一瞬のムーブで上体を上げる駆け引きを見せておいて、後ろに警戒を持たせ逆に健がステップバックし、

ーーザッ!!
鮮やかなシュートを決めた。

「すっげ…!!見たかよ今の」
「完全に湊がやられた…!!」
「さすが…健さん!!」
あっさりとやってのける健に王子と大成選手達は身を乗り出して見ていた。

「れっ!?健兄がプレーしてるし。怪我してんじゃねーのかよ!」
「そりゃ好きな女がかかってりゃ怪我なんてどってことねーだろ。」
「好きな女ってあたしか?」
「あえて確かめるなよ・・お前刺されるぞファンに。」
会場中いっぱいに溢れんばかりにいるスター兄弟のファンを見上げながら苦言する。