「・・・おい。そんなくだらねぇ勝負は許可しねーぞ。」

なんとなく経緯は読めたサブキャプのマイクが二人の睨み合いの間に入りストップをかけた。

「マイク。ただのアップだよ。」

ボールを叩きながら二ッと軽く笑う健に、
「・・嘘をつくな嘘を。」
そんなわけねぇだろ。と睨み、
「第一、お前腕も治ってねぇーのにここで無理して」
「ここで無理しねぇーと勝てねー相手だからな。」
再び挑戦的に翔真を見つめた。



「…へぇ。二人が勝負ね。」
コートに緊張が走る中、駿は隣でボールを回しながら二人を見た。
「湊がマジになって負けるとこ見てみてぇな。」
(中学時代からすかしたとこしか見てねぇからな。)

「マイクさん、五分だけ時間くれますか?」
(もう何を言っても無駄か。)
翔真にマイクは渋々ため息をついた。

「オッケー。ただしきっかり五分だ。」
「……ありがとうございます。」
「ったく。」
無茶苦茶な二人に大きなため息ついて承諾すると側にいた早乙女が冴えない表情をしていたので気になり、

「どうした?」

「あの二人の立場にまでなりたいとか思っていつたけど、違う。」
「さっきジャンプ台から落ちるって危ないって思ってた彼女を僕は怪我を恐れて受け止めになんか行けなかった。」

「…早乙女…」
「健さんは迷わずに真っ先に受け止めに向かってたのに僕は足すら動かなかった。」
「それは普通だ。」

「……普通だから彼女の心には僕は何も残らないんだ。」

きっとあの場に翔真がいても、きっと健と同じように受け止めに駆け出す。そう思うとより早乙女の心は胸をかき乱した。

「いくら強くなったって、いくら思ったってそれだけじゃ選ばれない。相応しくないんだ。」

「そこを後悔するな。俺らは東京代表のバスケ選手だ。それより優先にするものなどない。」
「……!すみません、ちょっと顔洗って頭冷やしてきます。」
胸にささるマイクの言葉に顔を隠すようにしてサッと体育館を出ていってしまった。

「……っとに。うちの早乙女まで。」
(成瀬といい匠といい…全国ナンバーワンの健に、東京ルーキーの翔真までをも虜にするあの女の一体どこがいいんだか・・・。)

“よぉーマイク!”
いつも大口開いて能天気な色気のかけらもない礼儀もない彼女の良さが・・・・

「全く分からねぇ・・・っ」