「買い出しに行って一時間経っても帰って来ないし、スマホも持っててないし、周りには心配しすぎだとかどっかで寝てるとか言われて、帰って来たら怪我してさ……」
感情を抑えて静かに話すも明らかに怒っているのが空気から伝わってきた未茉だったが、

「心配かけたのは悪かったよ。でもちげー!」
「違う?」
「あたしの身の心配なんかいらねーんだよ!!あたしが翔真から欲しい心配はちげぇからっ!!」
「ごめん。言ってる意味…」

「そんなに心配ならさぁー。」
首を傾げる翔真を未茉は苛つきながら見上げ、

「キスしろよ。」

「……は?」
当然その話からなぜそうなるのか分からない翔真は、耳を疑うように聞き返した。

「‘は?’じゃねーよ!あたしだってお前がずっとキスしてくんねーのすっげームカつくし、苛々してっから!!」

「……」
「心配心配言うならあたしのこの気持ちをーー」
言いかけた時、翔真の片手で顎をくいっと持ち上げられ強引に唇を押し付けてくる。

一瞬のことで未茉は驚いたまま目を見開いてると、
「!」
そこにはいつも愛しそうに閉じる目蓋じゃなくて、静な怒りをきつく閉じこめたような目蓋が視界いっぱいに映った。

唇の感触など何にも残らない程のわずかなキスはすぐに唇を離されて、翔真は距離を空けてこっち見て言った。


「キスしたよ。それで何があったの?」

「……はぁ?喧嘩売ってんの?」
「売ってないよ。」
「なんだよ……今のキス。」

そう放った言葉が震えてしまう程、未茉は怒りとショックに満ちながら翔真を睨んだ。