「離せって!!翔真っ!!」
教室がそんなことになっているとは露知らず、未茉の腕を握ったまま、廊下をずんずん進んでいく明らかに怒った背中を向ける翔真。
「みんなとこ戻るって!!」
手を振り払い、逃げようとするも
「やめろぉおおっ!!!離せぇぇぇっ!!!」
掴まれひょいっと大きな肩に片手で背負われ、もがき暴れる未茉を無理矢理保健室に連れてかれ…
「なんで喧嘩なんかしたの?」
ムスッとする未茉の唇に優しく消毒液をつけながら翔真は尋ねるも、
「なんとなく。ムカついたから」
明らかに何かを隠したように目をそらしながら答えるので余計に不信感を募らせた。
本当のことを言ってしまえば、翔真はもちろん、結城は気にしてしまうだろうし、何よりも結城の彼女をボコボコにしてしまった自分も少し反省をしていたのだった・・・。
「相手は?誰?」
「そこら辺の女だよ。妙な言いがかりをつけてきてさ。」
「……」
青く腫れる青あざに湿布を貼ろうとした翔真の手を引っ込め、
「っーか本当に大丈夫。見た目ほどいたくねーんだよ!さっき拓哉にも冷やして貰ったし!」
「拓哉……?」
どこかで聞いた名前に翔真は手を止めると、
「あ、いや。たまたま知り合いが通りかかって冷やしてくれて」
また明らかに何かを隠してると思われる彼女の目を見た翔真は少し見つめた後、
「男と一緒だったの?」
「荻山拓哉だよ。前にバッシュ届けてくれた奴!」
嘘は苦手だと未茉は頭をかきながら、
「もーっ分かった言うよ!!翔真には本当のこと!」
そう面倒くさそうにため息ついた未茉は真っ正面の翔真の方を見ると、
「凄い心配したよ。」
伏し目がちにそう重たい言葉を放ってきた。



