「たっだいまぁー!!!見てみろっ!!じゃっじゃぁーんっ!!!」
すぐに戻ってきた未茉の手には、

「車イス!!?」

「おー!いいから乗れって!!」
ひょいッと和希を持ち上げて車椅子に乗せる。
「足曲げて痛くねーか?」
「いや・・なんっーかいてぇけどビックリしすぎて感覚わかんねー・・・・」

「おうっ!じゃーちょうどよかった!!」
そう確認した後、未茉は後ろに回りハンドルに力を入れ
「goッ!!!」

「うわっ!!!!」
驚く和希を乗せて病室を飛び出した。

廊下のすみに隠れながら看護師のいない隙にエレベーターに乗り込む。もう夜だからかあまり看護師に会うことなく外に出られ病院の正門脇の中庭に辿り着くと、

「うわぁ……!!外の空気……!!久々だぜっ!!!」

囲まれた病室の重い空気から束の間の解放と数週間ぶりの外の空気に和希は気持ち良さそうに空を仰ぎ、三日月を見上げて胸一杯に空気を吸い込んだ。

「すげーマジ気持ちいいー!!」

足は痛むものの視界いっぱいに広がる無限の当たり前の星空に遮りのない空間に当たり前の幸せを感じた。

「おー!よかった!!」
久々に見た弟の笑顔に未茉もつられて笑顔になった。