「矢野さんと前原さんが国体選ばれたぁあ!?」

体育館に向かう廊下を歩きながら思わぬ朗報に
「まーね。」
少し照れながらも、どや顔をする矢野に
「わぁーいっ!!!やったぁぁぁあっ!!!」
矢野の腕をつかんで飛び上がって喜ぶ未茉に
「ちょっとっ!!離してよ!!痛いわねっ!!!」
恥ずかしいっと睨みながら腕を振りほどく。
「だってー超嬉しいじゃないっすかっ!!明徳で国体行けて嬉しいっ!!!」

「……」
入学当初は一年の未茉が二年を差し置いてスタメンに選ばれたことに腹を立て憎しみ、

“なんでうちの高校に来たのよ!?あんたなんて強豪には行けない弱虫なんじゃないの!?”

ひどい言葉を散々投げつけたのに、自分の名誉には自分のことのように一点の曇りもない満面の笑みで喜んでくれる未茉に、矢野は少しだけ胸が痛んだ。


「そうだ。国体選手は明後日の日曜に大成で練習試合あるってさっき神崎監督が言いに来たよ。」

「えっ!?マジっすか!?相手はどこ!?」
「千葉代表だって。」
「へぇー!!代表同士なんて超ーたのしそー!!試合したいっしたいっ!!試合ー!!!」
わぁーいわぁーいっ!!と跳び跳ねて喜ぶ未茉に矢野は思わずクスッ……と笑ってしまい、

「あっ!!笑った!!!」

しまった・・とハッ!!とする矢野は、
「わ・・笑ってなんかないわよっ!!」
「えーっ!!笑った笑った!!ぜってぇー笑った!!!」
「笑ってないっていってんだろっ!!!」
「わぁー!照れた!!!先輩可愛いー!!あはははっ!」

胸の中で少しずつ消えていくわだかまりに本当はどこか嬉しい矢野であった。