「翔真ー。」
腕を緩めて目を閉じたまま顔を見上げ、
「ん?」
キスをしようと両手を首の方へ絡めると、
「寝ないと時間なくなるよ。」
そう交わされ頭を撫でられるだけで唇はちっとも降りてこない。
「やだ。キスするまでやだ!!」
駄々っ子のように足をバタつかせながら睨む。

「この間っからキスしてくんない!ムカつく!」
苛立ちからポンッ!と肩を叩く未茉に

「日本ではキスは本来恋人同志がするんだよ。」
「あれ?お前日本人だっけ?」
「日本人だよね・・。」
「今まで散々してたくせに」
「今までは……」
「なんだよ急に頭のかてぇオヤジみたいなこと言い始めて」
「・・・・。」
「いーよもー。したくねーんなら」
ふてくさるもやはり次第に眠気が勝ってくる未茉は瞼をこすりだす。

「……したくないわけがない。このまま今の状態続けたら未茉ちゃんが……」と言いかけると、
「Zzzz・・・」
「大事なとこでいつも寝るよね・・・。」
「Zzzz……」
「しかも秒殺で・・・」
ひきつりながらため息つくと、自分に頬寄せて気持ち良さそうに眠る憎めない彼女の鼻をキュッと掴むと、

「ふむゅ!!・・むっZzzz」
息が止まり苦しそうに起きるのかと思えば一瞬白目を向くもすぐにまた寝てしまう。
「あははっ!」
不細工な寝顔に面白そうに翔真は笑い、頬をつねったり睫毛を人差し指で撫でたりして遊ぶも、
「んー……」
眉をよせてさらにぎゅっと翔真を強く抱き締めて再びイビキをかいて眠る。

「…好きすぎてもうどうしていーか分かんない。」

建前と欲望と理性と、彼女の為にしなければならないこと。翔真の頭の中で歯止めをかけるも、

彼女の香りも慣れた温度感も気ままなこの無邪気さも何もかもが愛しくて欲しくて……
心の中で押し寄せる波にブレーキをかけることに必死だった。

両腕の中でしっかりと抱き寄せ束の間、目を閉じた。