「腕治った?国体出れそー?」

店を出て駅の改札を並んで歩きながら健に尋ねた。
握力勝負をできるくらい痛みが治まったのかと期待したからだ。

「無理だ。さっきの未茉の握力にやられて完全折れた。」
「嘘つけ・・。」
「まだ電車こねーな。」
さっき出てしまったばかりなのか、ホームに到着すると静まり返っていた。

「なー。話変わんだけど。」
少し温度の下がった夜の渇いた風が体にまとう中、健は胸の中に留まっていたような気持ちを見つけ、

「何?」
誰もいないベンチに腰かけながら未茉が顔をあげると、電車も人も来る気配のないホームに佇みながらポケットに手を突っ込みながら面白そうな笑みを浮べる彼が言った。


「俺の記憶の中で今が一番お前のこと好きになんだけど。」


ガタッ・・・・!!!!

あまりに唐突な告白に真っ赤な顔して心音バクバクの未茉はベンチから滑り落ち、
「話変わりすぎだろ・・・!!!!」

そう突っ込まずにはいられなかった。

「変わるったろ?」
腰が抜けて立てない彼女の腕を引っ張りあげ、
「知っといてくれればいーから。」
また一点の曇りもない真っ直ぐすぎる揺るがない瞳で、

「俺の気持ちにお前の答えなんかいらねーよ。」

お前が誰を好きでもお前が好き。
そう言われてるのが分かった。
健はいつだって未茉の心に響く言葉を置いてく。
置いて、何事もなかったように前を見つめる。

「だからお前はいい女ぶんなよな。」

「うん?さんきゅー」
最後の一言だけはよく分からなかったが未茉は笑った。