キーンコーン……

朝練を早々に引き上げ、久々に鳴り響く学校のチャイムを耳にしながら未茉は秋空が一面に広がる屋上で武士のようにかしこまった正座をしていた。

「翔真殿っ!例のブツは持って来て頂けたでありまするか?」

「持ってきたよ。」
「よろしい。では!!写させて頂きたいと存ずる!!」

改まり両手で翔真の手から宿題のノートを奪おうとすると、サッと高く持ち上げられ、
「うおっ!!!届かなっ・・・!!!」
「あははははっ!」
「くぅーーっ!!」
何度も自慢の脚力でジャンプして取ろうとするも、190cm相手に片腕伸ばされちゃ届くわけもなく、

「ぬぁんで見してくんねぇーんだよ!!!」

「タダで見せるとは言ってない。」
「あたしのこと好きだから見せるったじゃんっ!!!」
「それはこの前の話。」
ツーンっと翔真にあしらわれる未茉はわなわなと込み上げる怒りで震えるも、
「お主も悪やのぉ・・・」
仕方なく財布を取り出し、中身を恐る恐る確認すると、
「300円。」
覗きこんだ翔真がすっからかんの財布の中身を言った。

「くぅ~~~、仕方あるまい。この300円をそなたに捧げるとしよう・・・」
涙に濡れながら財布ごとお備えすると、
「お金なんていらないよ。」
にっこりと微笑む仏の翔真に目を輝かせ
「翔真ぁっ!!!!」
飛び付こうとすると、サッと避けられ
「なんなんだよてめぇーはっ!!!!」
ぶちギレて怒鳴ると、
「どおっしよっかなぁ~何して貰おうかなぁ~。」
ノートをピラピラさせながら意地悪に微笑んでる。