「あれ、和希寝てんの?」

次の日の午前中、健が病室を尋ねると和希は苛立った表情でふて寝をしていた。
「……寝てねーよ。っーか昨日から苛々して寝れねーんだよ!」
「どうした?ついにたまって限界か?」
「それもあるかもしれねーけど、ちげーよっ!!!」
「ははっ!じゃーどうした?」

「……兄貴の彼女が来やがった。」

「!……神崎さんか!?」
「!!健兄ちゃん知ってんの?!」
お互いに驚き確かめ合うと、
「兄貴の野郎……変な女寄越しやがってぜってぇなんか企んでやがる……」
怒りで震える和希は拳を固く握りしめる。

「いや、彼女はそんな悪い人ではないよ。」
「なんで知ってんの!?知り合い!?」
「王子の卒業生だし、今未茉達の国体の監督を受け持ってる方なんだ。」
「えっ!!?」
「俺も最初なんの嫌がらせかと思ったけど、神崎さん本当に颯希さんの家族のことも何も分かってねーんだ。」
「そんな知らねーふりしてんじゃ……」
「俺もそう思ったけどどうやら違うような気がする。」
「……でも」
健がそう言うならそうかもしれないのかもしれないが納得いかない表情で俯き、

「健兄。」
「ん?」
「姉ちゃんを守ってくれよ…頼むよ。」
姉思いのまっすぐな思いが伝わると、微笑みながら和希の頭をがしがしと強く撫でながら、

「あたりめぇーじゃん。お前ら全員守ってやんのが俺の役目だろ。」