TIPOFF!! #LOVE AUTUMN






「勝ったのにあんまり喜んでくれてないみたい。」
帰り道、二人で歩いていてもどことなく上の空の翔真に面白くなさそうに言ったら
「そんなことないよ。」
「うそ!ある!!」
思わず私は翔真の腕を掴んで問い詰めるように見上げ、
「相手チームのエースの子、可愛かったね。もしかして見とれてた?」
からかい半分の悪ふざけのつもりが、らしくない無言の反応だった。

「やっぱ嬉しそうじゃない!!もういいっ!!!」

ずっと付き合っていても、片思い感が否めなくて募っていた苛立ちからの八つ当たりだった。
またそんな自分が嫌いだった。

「翔真、別れよ。」

そう言えばーー慌てて焦ってくれるんじゃないか。
驚いてくれるんじゃないか、びっくりして改めてくれるんじゃないか。

抱きしめてくれるんじゃないか。

私には自信があった。


「……」

だが翔真は私のその言葉をずっと待っていたかのように無言だった。


期待していた展開にならないそれがなんも想われてなかったみたいで辛くて……

「なんで……?」

溢れだした感情の渦は無情にも言葉にならなくて、たった一言その疑問しか出てこなかった。

彼の胸を叩きながら私の頬には涙が伝った。


毎日LINEや電話を彼から来るのを待って余計に寂しさ募らせていった。
物分かりのいい年上を演じていたけど、毎日部活で顔合わせても毎日一緒に行き帰りしても本当は全然足りなかった。

彼の心を埋めるのに全然足りなかった。




「……ごめん。ユリ。分かってたけどどう接していいか分からなかった。」

「……」
やっぱり想われてなかったんだなって現実を突きつけられた。

「幸せにできなくて、大切にできなくて本当にごめん。」

「いっ…いいよ。振ったのは私だし。」
上ずってしまった声を隠すように一瞬にして涙を拭いて顔を見上げて走り去った。

追いかけても否定してもくれない。

悔しさと苛立ちから握りしめた拳のポケットから出てきた今日の決勝戦の相手チームのロースターの名前に白石未茉があった。


あの日、最初から最後まで強がった私の本気の恋に膝をついて泣きじゃくった。


人生で一番泣いたかもしれない。