「和希にとってこんな大きい怪我初めてだろ?そんな長い間バスケから離れるっていうのはこれからがキツい。」

「……あたしも怪我はしょっちゅうするけど、そんな大怪我ねぇーな……」
「俺はちっせー頃あったけど、キツかったの覚えてるな。」

乗り換えの駅のホームに電車が止まり扉が開くと、遅延していたからか電車は満員で人混みの中を二人で入ってくと、
「来いよ。」
扉側の一番隅に未茉を誰にもぶつからないように誘導させて二人の身体は密着するも、キスを思い出させるくらいの至近距離で健が両手を壁につき守ってくれる。

「これ壁ドンっていうんだろ?」
「お前にかよ。」
「・・あ?人のこと好きとか愛とかなんだとか言っておきながら」

ブツブツ言う未茉をいつものキリッとした顔つきとは全く別人の綻ぶような健の優しい目で微笑む表情を、発車した電車から入れ違い様に降りてきた翔真はホームからそんな二人の姿を目に止めた。



「あれ……湊、今日も来てくれたの……?」

足音を立てまいように入ってきたつもりが病室に着くと和希は起きていて、
「うん。こんばんは。」
翔真は差し入れを置きながら微笑み、椅子に座った。

「残念だな……姉ちゃん…なら別の男と帰ったぜ?」
「うん。知ってる。」

「俺、姉ちゃんの隣は湊でもいいぜ…?」

「あははっ。じゃもっとエロ本持ってこないとなぁ。」
「おう!頼んだぜ…。楽しみ増えるから」
「結城にリサーチさせとく。」

「健兄もいいけど、翔真はエロ本持ってきてくれっから応援しねーとな……。」
「頑張るよ。どっちも。」
二人は顔見合わせて笑っていた。