「悪い、まだ俺練習したくて。」

バスTの姿のまま翔真は、校門にいるユリの元へ行くと
「うん。じゃ今日は帰る。」
「ごめんな。」
「ううん!こっちは翔真の顔見ると元気になるから。」
にこっと翔真の顔見上げてユリは微笑むと、

「あっ!じゃーな!!翔真ー!ユリ・・・さんっ!!」

ちょうど猛ダッシュでやってきた未茉が手を振り校門をチャリで駆け抜けてくと、
「それ誰のチャリー?」
「キタローのー!貸してくれたぁー!ばいばぁーいっ!!」

夕暮れの眩しそうな翔真の瞳は、ペダルを力一杯こぎながら現れた無邪気な彼女の笑顔を映すと、微笑み手を振った。
そして揺れるポニーテールすら愛しそうに見えなくなるまで眺めるその彼の姿は、まるで全身から愛しさが溢れ落ちてくるようにユリの目には写った。


「今ので一気に元気なくした……」

そんな翔真にふてくされて呟くと、
「え?」
聞こえてなかったのか聞いてなかったのか聞き返してくる。

「……またね。」

ユリも夕暮れの中を静かに歩きだした。
(…きっと私の後ろ姿はあんな風に見ていてくれない。)

悔しいから振り返って確かめるのは、やめた。