「万が一、付き合って健さんを吹っ切れなかったらどうするの?」
少し重たそうなため息をついた翔真は寄りかかったまま、未茉の首元にうっすらと残るキスマークを見上げながらそう尋ねた。
「俺と付き合ってて健さんのことが好きだって気づいたら、今度は俺を傷つけたくないって別れられなくなるんじゃない?」
「……」
落ち着き放った単調な言葉の翔真に未茉の胸はまたチクリと痛みだしたが…、そこへすかさず三上は間に入った。
「カップルだから。どんな相手でも気持ちが永遠なんてわけがないし、気持ちが離れたり変わったりして別れることだって普通だよ。」
現実と正論を述べる三上に、結城は何度も深く頷くも翔真は顔色ひとつ変えずに首を振った。
「昨日も言ったじゃん?健さんを想う気持ちも大事な気持ちでしょって。俺は100%の未茉ちゃんと付き合いたいの。」
立ち上がって時計を見上げて昼休憩終わるなという顔してまるで他人事のように話を終わらせた。
「なんだよ翔真の奴なんか変じゃねーか?」
先に戻っていく後ろ姿を見ながら結城はそう目を細めた。
「いつもならアイツ“ 未茉ちゃんならそれでもいいよ♡”とか笑顔で言いそうなのによー。」
「いってぇー……」
未茉は思わず胸を抱えながらしゃがみこんだ。
「あ?なんだ?どうした?」
「なんか昨日から胸がいてぇーんだよ。」
「食い過ぎじゃねーの?だってお前朝から何本アイス食ってんだよ。」
「あー?夏のアイスはなぁ~…」
言い合う結城と未茉を置いていき、三上は翔真の後を追った。



