「昨日も健くんが来てくれてねぇー、和希喜んでたわぁー。幸せ者ね。」

「え。健さん?」
「うん。ちょうどね外来に来てたみたいで偶然会って!虫の知らせとはこのことねぇ~~。」

瑞希が家で一人で待ってるため、未茉はママを残し病院から出て駅まで歩いてると、隣で何か引っ掛かってる様子の翔真を見上げた。

「翔真?どうかした?」
「……健さん。」
「え?」
「昨日王子でバス降りたのにわざわざ逆方面のこっちの病院まで来たんだなと思って。」
「あー。そういえばそーだな。」

「部を心配してたわりにそんなすぐに病院に引き返すくらい左腕痛かったのかな。」

「え?!」
考えもしなかったことを翔真が心配そうに言うから、未茉も驚き
「そうなのかな…ちょっとそれも心配だから帰ったら電話してみるっ!!!」
「うん。それは喜ぶと思うよ。」

いつものように普通にさらりと言われた言葉だったが、すこし未茉の胸はチクリとした。
「あれ・・なんだろこの胸の注射は・・・」
チクチクする胸を押さえながら歩いてると、

「翔真、スマホ鳴ってるよ。」

後ろポケに入れてて気づかなかったのか、翔真のスマホが透けて光ってた。
「あ、ほんとだ。サイレントにしてたから。」
取り出して着信画面を見ると、ユリからだった。
「ちょっとごめんね。」
「おー。」
ちょうど駅に着くと未茉は時刻板を確認してるとすこし離れて電話をしていたがすぐに戻ってきた。

「誰からー?」
売店でアイスを二つ買って差し出すと、
「…ユリ。」

「あっ!そーいやユリどうなった!?」
「分かんない。」
「ふーん。あっ、ねぇ翔真のアイス一口ちょーだいっ!」
あーんっとかぶりつこうと口を開けてると、ひょいっと交わされ、

「あははっ!間抜けな顔!」
「もーっ!!!バカッ!!!意地悪翔真っ!!!」

叩きながらいつものようにじゃれあうも、心の中の微妙なズレを翔真だけは感じていた。