「あれ。未茉ちゃん自主練しないの?」

部活が終わると珍しく帰ろうとする未茉を不思議そうに翔真は呼び止めた。

「うんー。今、和希入院してんだよっ!だから顔見せに行きてぇーし家のこともやんなきゃだからよ。」
「えっ!?和希君入院したの?」
「あー。試合で半月板損傷」
ポカリをぐびぐび飲みながら、未茉は帰り支度を始める。

「じゃ俺も行こうかな。心配だし。」
「マジで!?和希は翔真大好きだから喜ぶよ!!」
嬉しそうに未茉が笑うと翔真も優しく微笑み返した。

「白石、和希にこれでなんか雑誌でも買ってやって。」
話を聞いていた結城と三上が千円札を渡してきた。
「えっ!いーの!?」
「お前が使うなよ・・」
「チッ、バレたか。」

「本当は俺らも行きてぇけど、練習したいから。」
「和希喜ぶよ!さんきゅーな!」
「おう。本当ならナースもののいいのをチョイスしてやりてぇとこだけどな。」
にやっとする結城に翔真が足を踏むと、
「いってぇ・・・お前も好きなくせにっ!!」

「・・・あ?なんの話だ?」
ぽかんとする未茉に翔真は手を引っ張って出ていく。

「湊、帰った?」

しばらくして前原が男バスのコートに入ってきて居残り練習してる結城と三上に尋ねると、
「帰りましたよ。白石の弟のお見舞いがあるから。」
「ふーん。」
「どうかしました?」

前原は腕を組みながら面白くない表情でくいっと親指を立てて体育館入り口を指した。
「「?」」
二人のその視線の先を辿ると、

「マジ門前払いしてやろーかと思った。敵地に来る?わざわざ。」

「前園ユリ…」
二人は険しい顔で顔を見合わせた。