病室を出た未茉は禅に差し出された缶ジュースを手にして二人で中庭のベンチに座った。

「…和希には一ヶ月ってあるんですけど、もしかしたら最悪は半年はかかるかもって親父(医師)が。」
「えっ!!?」

思わず立ち上がり未茉はジュースを溢してしまった。

「なんで!?そんなに悪いの!?」
問い詰めるように禅の両肩を掴み揺さぶると、
「状態的にはかなり損傷が激しくてたまに痛みで熱も上がるらしく快復が遅くなるかもって言われてるらしいっす。」
「マジかよ……」
さっきの和希の涙と悲しみがリンクしてクラクラとベンチに座り込む。

「半年ってことは冬の引退試合も厳しいのかよ!?」
「…最悪の話ですよ。最悪の。」
鋭い視線で真っ直ぐ前を見つめたままの禅の目も傷ついているのが伝わってきた。

「禅、悪かったな。気にさせてお前これから受験だしな。」

「それは心配いらないです。余裕の進学なので。」
「あーそうかよ・・・。」
「まぁ、我が名門中で三回落ちるなんていう伝説残したの先輩くらいですよ。」
「ぐぅっ・・・」
「なんでそんなに頭脳低下してるのか、一度うちの病院で検査してみましょうか?」
「あ・・・?」
「俺が全身隅々まで見ればその異常が分かるかもしれない。」
「そんなこと言うお前の脳ミソが異常だ!!あたしが耳の穴から引きずり出してやる!!この変態坊っちゃんがっ!!!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ中庭でそんなやりとりをしている一方で病院の外来受付では、健が座っていた。

「あれ?雅代さん。」
外来から出てきた未茉の母に気づいた健は呼び止めた。
「あらっ!健くん!!やだ健くんまでお見舞いに来てくれたの!?」
白石家の誰かに何かあったのかと悟った健は頷き一緒に病室についていった。