「あっ、禅じゃーんっ!!」

すっかり日は落ちて未茉は地元の駅に到着すると、目の前のレンタルビデオ屋から出てきた禅を発見して手を振り大声で呼び止める。

「あっ、先輩!」
「なっにしてんのー?!あっ!!分かったエロいの借りたんだろっ!?」
ばんっ!!と背中を叩きながら言うと、通りすぎる人がいかがわしい目で禅を見ている。

「先輩・・・声。」
でかすぎる声にイラッとしながら睨むも、
「え?なに???」
全く彼女は分かってなかった。


「あっ!ちょーどいーやっ!家帰るんだろ?これ持てよっ!!」
合宿の大荷物を人に押し付ける未茉・・・

「凄い荷物ですね…どこ行ってたんですか?」
「カラオケ!」
「は?」
「じゃねーや!合宿だ!国体の!!」
「選ばれたんですか?」
「あったりまえじゃん!お前も来年選ばれるだろっ!」

「そうだ。ちょうどいっか。先輩乗って下さい。」
「へっ?!」
目の前に止まる禅は迎えのハイヤーに荷物を乗せて未茉を誘導し、
「あんだよ!!あたしは歩いて帰るぜ!」
「いや、早く帰った方がいいです。」

「なんでだよ。あ、そーいやっ!お前らの総体どうだったの!?」
「……負けました。」
「えっ!?マジ!?てっきり勝つかと思ってたんだけど!!」
「……」
「なんだよっ!もー元気だせって!!!」
口を閉ざしてしまったらしくない態度に未茉は背中を叩いて禅を覗きこむと、
「和希が怪我して今、うちの病院に」

「えっ!!?」