「昔から……じゃねーよ……」
そんな至近距離の彼のその目に写る自分が揺れていて、心臓から飛び出す程の心音に拍車がかかり、思わず言葉に詰まってしまった。
だんだん吸い込まれるように未茉の手は無意識に健の頬に伸ばして目を閉じていた。
そんな彼女に気づいた健もまた目を閉じ、彼女を支えるように背中に手を回し唇を近づけると、
ーーートントン。
「!?」
ドアのノックの音にビクッと未茉は体を震わせ目を開けた。
そこにはキスをしようとして顔を斜めに落とし近づける健の唇が寸止めだった。
「健。工藤監督が呼んでる」
「分かった。すぐ行く。」
扉の向こうのマイクの声に健はそう平然と答えると、未茉はハッと我に返った。
「あたし、キス自分から……」
そこに気づいてしまうも、健がこんな展開を見逃すわけがない。
「ギブ、させねーよ。」
そう意地悪そうに彼女の濡れた髪がかかる顎を持ち上げてクスッと笑った。