「匠兄ー!ちょっといー!?」
宿泊所に戻ってきた未茉は星河兄弟の部屋の扉を勢いよく開き入ってく。
「お前はノックって言葉知らねーのか。」
読んでいた雑誌でコツンと健に叩かれる。
「いって。」
頭を押さえながら睨むと、
「座りな。未茉。」
その二人らしいやりとりに匠は優しい笑顔で椅子を差し出すも、
「んーベッドでいいっ♡」
ふかふかなベッドの上にダイブしコロンッと幸せそうに転がると、
「お前、今度は匠に犯されるからな。」
健が冷たく言い放ち立ち上がるも、
「す・・・するわけないだろ。」
冗談なのに動揺してしまう匠を見て健はケラケラと笑いだすと、その場の空気を軽くしようとしてくれてる兄の優しさに弟は気づいていた。
「そーだよっ!匠兄は健兄と違って紳士だもんっ!!!」
べぇーっと未茉は舌を出してる。
「わかんねぇよ?突然魔がさすかもな。」
ジャージを羽織り部屋から出ようとする健に気づいた匠は、
「いいよ。健いてくれよ。未茉、話って何?」
「……」
いてほしいのか、それとも未茉が話すことを聞いてほしいのか分からないが、健は匠がそう言うのならば…と座っていた椅子に腰を下ろした。
「さっき部屋に戻ったら静香が匠兄が尋ねてきたっていうから。どうしたかなっと思って!」
(・・・・どうしたかなって・・。お前がキスしたからだろ。)
と突っ込みたくなるのを健は隣でイラッとしながらも黙るのに必死だった。
「…試合の時はありがとう。おかげで元気出たよ。」
「ほんと?よかったっ!!」
「でももう俺になんかキスしちゃダメだぞ。するなら健にしてやれ。」
「匠…」
そうそれはまるで、俺は未茉を想うことは諦めるーーそう自ら健の前で意思表示しているようだった。
「分かった。キスなんかして悪かったよ。」
「いや…俺もこれからは未茉の兄貴らしく負けないように頑張るな。」
「ん?うんっ!」
天真爛漫にニカッと笑う彼女の笑顔に救われるように匠は自分の想いにケジメをつけたのだった。