「うち今日匠さんの応援したんやで。振られたのにや。」
「静…」
「でも聞こえんかったやろ?」
「……!」
「未茉の声しか聞こえんかったやろ?」
「……ごめん。」
「他の男が好きな女なのにそんな女の言葉とキスじゃなきゃ立ち直れん匠さんはしょーもない男なんやっ!!!」
「…静香ちゃん……」
「うちにはそんな男いらへん!そんな意気地無しな男、うちには相応しくあらへん!!!」
そう強く言い切る静香の言葉がわざと自分のために投げてくれているのに匠はうっすら気づいたのだ。
「ありがとう。」
「礼言うところじゃないで!」
「あ…うん。そうだね。ただ一番心配だったのは二人が気まずくなったらどうしょうか心配だった。」
「ほな、それが一番心配いらへんな。」
「え?」
「親友やねん。うちらの友情は男ごときで壊れへん。」
ふんっと鼻息を荒くして言い放つ静香に、
「そうだね。間違いないね。」
そう優しくふがいなさそうに笑って見せた匠の笑顔に、
「ほな寝るで!!!」
ーーバタンッ!!と自分の恋に踏ん切りをつけるかのように勢いよく扉を閉めたのだ。
「……」
そんな静香を申し訳なそうに数秒間だけ、閉まった扉を見つめた後ゆっくりと自分の部屋へ戻った。
ベッドに戻り少し涙ぐむ静香のスマホが鳴っていた。
♪♪
【着信 田島さん】
涙をこすり、少し落ちた声をあげて電話に出た。
「もしも…」
『いい女じゃん。静香。』
「!?」
『それでこそ東京王者大成のスタメンとっただけあるよ。』
まるで匠とのやり取りを聞いていたかの口振りに静香は驚くと、
『隣のうちらの部屋来い。愚痴付き合ってやるから。』
「た・・・田島しゃぁぁぁああんっ・・・!!!」
プレーとは裏腹に意外と後輩想いの姉御肌な田島に静香は泣きつくように隣の部屋に向かったのだった。
(前園だけじゃなく静香までいなくなったらこの国体やべぇーからな。)
静香を慰めながらやはり腹黒い田島なのであった・・。



