「いつもそう言ってチームの足引っ張ってるよねぇ?」


そう言ったのはバレー部のアキホだ。


あたしは咄嗟に間に割って入ろうかと思ったが、その視界にアキホの数字が入ってしまった。


32111。


価値が1万に到達していないアマネに比べれば随分と高い数値だ。


アキホは勉強は不得意だけど、バレー部で好成績を残しているからのようだ。


「それでも、あたしはあたしで頑張ってるから」


アマネは必死で自分の気持ちを伝えている。


しかし、バレーに本気のアキホにはその気持ちは届かない。


「そんなんじゃ試合にならないじゃん!」


体育の授業と部活は違う。


そう言ってあげたいところだけれど、あたしは一歩後退していた。


アマネとアキホでは数値が違いすぎる。


ここでアマネを庇うと、価値の高い人間を敵に回すことになる。


そう考え、体操着の袋を持つとそっと教室を出たのだった。