だから、言えない





「お疲れ、佐山くん」
「お疲れ様っす」
「シュークリーム、
渡せたんだね」
「飯田さんのお陰っす」

飯田さんはそんなそんな、
と言いながら、手を振った。

「いつでも相談に乗るから。
頑張れ、若者」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、お先に失礼するね」

あの時、飯田さんが、
竹本に誕生日の話を振らなかったら、
俺のシュークリームの出番はなかった。

わざと俺の前で、
聞こえるように誕生日の話をすることで、
俺は誰かにこっそり
あいつの誕生日を聞かず、
プレゼントを渡せたわけだ。