だから、言えない



村薗先輩が
私の前に差し出した紙袋は、
私の大好きなお店のものだった。

「城野屋のおかきですね?!」
「うん。
ことちゃんはこういう
しょっぱいお菓子が好きなんだよね?」
「そうなんです!
嬉しいです。
ありがとうございます」

村薗先輩、私が甘いものが苦手なこと、
ちゃんと覚えててくれたんだ!


「せっかくなんで、
あがって行かれますか?」

外は寒いし、
わざわざここまできてくれたのに、
おかきをもらって、
はい、さよならっていうのも、
なんだか失礼かと思った。

「……」

私の言葉を聞いた、
村薗先輩の表情が、
急に真剣になった。

「ことちゃん…」

先輩はそう言いながら、
少しかがんで私の顔に近づくと。
耳元でささやいた。

「金曜の夜なんかに、
男を部屋にいれたらだめだよ」
「へっ!?」