だから、言えない




その後、竹本さんは昔話をしだした。

あたしにしてみれば、
この話をすることで、
自分はあざとくない、
わざとしたわけじゃなくて、
天然に虫だと思って、怖がってるんだって、
主張してるように聞こえた。

それはこんな話だ。


「小学生の時に、
友達の家から一人で帰ってたら、
人通りの少ない道で、気づいちゃって…」

竹本さんが私に向かって話し始めた。

「肩のこの辺に虫がついてるのを」

見て、といわんばかりに、
自分の腕の付け根辺りを指差す竹本さん。

その虫がついてるのに気づいた瞬間、
大泣きして、
道の真ん中で立ち止まった幼き琴香少女だったけど、
運よく助けられたらしい。