だから、言えない



「嫌ですよ」
と言い放つと今度は、
正面の席の佐山さんのもとへ駆け寄った。

「はいはい、取ればいんだろ?」

佐山さんが面倒くさそうにそう言って、
その《虫》をとったけど、
それはただの服の毛玉だった。

あざとい。
普通毛玉と虫なんか見間違える?

ただ虫が怖い、か弱い女を演じて、
佐山さんや村薗さんに
見せつけたかったんじゃない?

「あれ?ほんとだ!」
「ったく…。
ちゃんと虫かどうか確認してから騒ぎやがれ」
「すみません…」