だから、言えない


村薗先輩と佐山さんは
同い年だからか、仲がいい。
佐山さんの方が、村薗先輩より
先に入社したから、
佐山さんが先輩になるんだけど、
二人は同期みたいな
雰囲気なんだよね。

佐山さんは普段、
トゲトゲしてて、
なかなか話しかけづらいんだけど、
村薗先輩と話すときだけ、
丸っこい感じがするのは
気のせいかな?



「ねぇ、竹本さん」

今日は定時であがったから、
必然的に塚尾さんと
駅まで一緒になった。

「うん?」
「気付いたんですけど、
村薗さんって、
あたしのこと絶対好きですよね?!」
「え、そうなの?」

塚尾さんは両手を、
ぶんぶん動かした。
この子はいつも
よく分からないジェスチャーを
しながら話す。

「いや、絶対好きでしょ!
今日だって、
あたしのためだけに、
シュークリーム
買ってきてあげるって
言ってましたよね?」
「あー…」