だから、言えない



連がことちゃんに近づけば近づくほど、
俺は自分の気持ちを
押さえることが難しくなっていった。

俺は自分に暗示をかけた。
ことちゃんを好きじゃない、と。

だけど、そう思い込もうとするたびに、
ことちゃんは俺の心を揺さぶってくる。

あの日だって…

「ことちゃん!まだいたの?」
「村薗先輩、すみません。
もう少しかかります」

俺が仕事でトラブった時、
あちこち走り回って、
遅く事務所に戻ったら、
ことちゃんはトラブルの処理を
してくれていた。

「俺がやるからいいって、
言ったでしょ?」
「いいんです。
私が先輩を手伝いたいだけなので」
「ことちゃん…ありがとう」
「先輩のその笑顔を見れたから、
エネルギーチャージしました!」

俺の方こそ。

「ふっ。それはよかった」

こんなことされたら、
またことちゃんを嫌いになれない。


そして俺は気づいた。
高校のときより、
もっとことちゃんに夢中になっていることに…


だから、
ことちゃんが連にお弁当を作ってきたとき、
二人で連の家で寝たとき、
二人で専務の家の
もちつき大会に行ったとき…

俺はいつも、
連のためだと自分に言い聞かせながらも、
自分の気持ちを押さえるどころか
嫉妬までしてしまっていた。


一番大切なのは、連。
そう思って俺は
ことちゃんを避けることにした。

別に忘年会の後、
塚尾に脅されたからじゃない。

避ければ、
ことちゃんはもう俺に
絡んで来ることもないし、
たびたびことちゃんに
嫌がらせしていた塚尾も、
落ち着くだろうと思って。