だから、言えない



ことちゃんの笑顔を見るとき、
勉強のストレスなんて、
全部忘れられたし、
ことちゃんと話すだけで、
明日からまた頑張ろうと思えた。

ことちゃんは、呼び出す度に、
せんべいを頬張りながら、

「こんなとこ誰かに見られたら、
私は妬まれて学校中の女子に
処刑されちゃいますよ、先輩」
と言っていた。

「ごめんね」って俺が謝ると、
「勉強頑張って下さい」
と決まって、答えてくれる。


受験は、無事に終わって、
高校卒業の時、
珍しく、ことちゃんの方が
俺をあの場所へ呼び出した。

「すみません。
村薗先輩は告白ラッシュで忙しいのに、
呼び出してしまって…」
「ううん。どうしたの?」
「大学合格おめでとうございます」
「ありがとう」
「音大じゃないってことは、
先輩はもう音楽はやらないんですね?」
「うん……」
「私、先輩に確かめたいことがあるんです。