だから、言えない



「すみません。
お腹なりそうで。
後で歯磨きしますよ」

ことちゃんは、
こんなかわいらしい見た目なのに、
甘いものが苦手だというからおもしろい。

イチゴとかマカロンとか
そういうイメージなのに、
いつもポケットにせんべいを
常備してると知ったときは、
笑ってしまった。


「こぼしてるよ」

ブレザーのボタンのシワのところに、
せんべいのかすがのってたから、
俺は払ってあげた。

これもことちゃんと二人のとき
よくあることだった。


こういうところも、
ことちゃんを好きになった
理由の一つかもしれない。

妹のようにかわいくて、
放っておけない。
ずっと見ていたくなる女の子。



俺は夏に部活を引退して、
それから受験勉強の毎日になった。
だけど、勉強ばかりで、
イライラしたり、
逃げ出したくなったとき、
後輩指導という名目で、
吹奏楽部に顔をだし、
皆には知られないように、
こっそりことちゃんを
いつものことちゃんお気に入りの練習場所へ
呼び出したりしていた。


ただ、ことちゃんといたかったから。