だから、言えない



「だって、優くんは、
私のことなんて
もう忘れたかと思ってたので」
「そんなわけないじゃん」
「だって、周りにはいつもたくさん
女の子がいましたし…
私みたいな、
トランペットがへたっぴの
小学生のことなんて
忘れたかと思って…
でも、今日は目があったから、
もしかしたら?と思って
来てみたんです」

ことちゃんは嬉しそうに笑った。

「…じゃあ、今から言うこと、
絶対だから覚えておいてくれる?」
「えっ?それって長い文章ですか?
今、書くもの持ってなくて…」

あたふたする
かわいいことちゃんの頭に手を置いて、
俺はこう言った。

「短いから。言うよ」
「は、はい!」
「俺はどんなことがあっても、
ことちゃんを、忘れないから。
例え、音楽をやめても」
「へっ?優くん、
トランペットやめるんですか?」
「やめないよ。
ただの仮定だから。
俺が言ってるのは、
ことちゃんを絶対忘れないってことだけ」


正直、高校では
音楽を続けるのは無理だと思ってたけど、
それを言うと、
ことちゃんはまた
泣いてしまうかも知れないと思って、
はっきりとは言わなかった。

「私もです!
私はいつも優くんのことを思い出して、
トランペットを吹いてるんです。
忘れるわけありませんよ」

そう言って、
俺に見せたその笑顔は、
やっぱりかわいくて、
離れたくないと思った。