だから、言えない



しばらくして、
ことちゃんは行ってしまったけど、
俺は追いかけなかった。

もう、最後に話してから
二年も経ったんだし、
俺のこと忘れたのかも。

あれだけ俺にくっついてた
小さなことちゃんが、
俺を忘れて、
他の男にあの笑顔をむけるなんて…

まぁ、ことちゃんだって変わるよね。
もう、中学生になったんだし。


だけど、控え室へ戻って、
片付けを終えたあと、
部屋の外で、
俺たちの副部長が
ことちゃんと話しているのを目にした。

「優ー」

副部長が俺を呼んだ。

「優と話したいって、
ここでずっと待ってたみたいだよ。
北川中のトランペットの子だって」
「こんにちは」

ペコリと頭を下げたことちゃんを見て、
副部長はじゃ、と言って、
去っていった。


嬉しかった。
ことちゃんが、
俺に会いに来てくれるなんて。

「ことちゃん、久しぶりだね。
吹奏楽部に入ったんだ」
「もちろんですよ。
私はいつも優くんを追いかけてるので」

敬語か…

中学生になって、
先輩に教えられたのかな?

「ため口でいいのに」