だから、言えない



「…。
言わないと落ち着かなさそうだよね」
「だな」
「……
俺はことちゃんのこと、
ただの後輩だと思ってるし、
今までもこれからも
ことちゃんを恋愛感情で
好きだと思うことないから、
今日のキスは忘れてって。
本気じゃなかったって…
そう言っただけだよ」

優は口元だけニコッと微笑んだ。

「お前、まじで言ってんの?それ」
「うん」
「ふざけんな!
お前もあいつが好きなんだろ?!
なんで、隠すんだよ!
なんで、親友の俺に、
嘘つくんだよ!」
「…嘘じゃないって」
「やめろ!
嘘ついてなんの意味がある!?
もうバレてんだよ!
いつまでもそんなこと言ったって、
意味ねーんだよ!」

俺は掴んでいた優の胸ぐらを離した。
優は相変わらず
俺から顔を背けている。

「俺のために、
竹本が好きじゃないって嘘ついてんだろ?
そんな嘘、俺は嬉しかねぇーよ。
そんなことされるくらいなら、
お前と竹本が付き合ってる方が嬉しい。
俺は、親友のお前に嘘つかれるのが、
一番つれぇよ!」