だから、言えない



部屋に戻る途中、
エレベーターの中で、
塚尾が変なことを言い出した。

「佐山さんも、
竹本さんにキスしてみたらどうですかぁ?」
「はぁ?」
「好きなんでしょ?」
「…っ」

まぁ、そうだけど。

「悔しくないんですかぁ?
村薗さんは竹本さんとキスしたのに、
自分だけ何もしてないなんて。
する機会はいくらでもあったのに」

確かに、する機会はあったかもしれねぇ。
だけど、
竹本が大切だからこそ、
あいつの気持ちをしらねぇで
無理矢理キスしたって
俺は嬉しかねぇ。

だけど、今日のあいつらのキスの光景が
目に浮かぶ。

あぁ、もう、イライラする。

他の男が、
竹本に触ってた!
密着してた!
キスしてた!

しかも、それが、優だなんて…