だから、言えない



「村薗さん、
あたしともキスしましたよ」
「どうせ、
お前が無理矢理したんだろうが」
「でも、村薗さん、
拒んでませんでした」
「あっそ」

俺は買ったばかりの水のボトルを出して、
キャップを回した。


「俺は優のこと許せねぇ」
「好きな女にキスなんかされたら、
腹も立ちますよねーぇ」
「いや、そうじゃねぇ。
親友の俺に嘘ついて、
ほんとの気持ちを隠してたのが許せねぇ」

俺は水を少し飲んだ。

「あいつが優しすぎんのは知ってる。
人のことばっか気にして、
いつも自分を犠牲にする。
優の悪いとこだよな」
「佐山さんのことを思って
嘘ついてたなんて、
ほんといい人じゃないですかぁ。
それで、竹本さんのことは、
どうするんですかぁ?」

塚尾が言った。

「…俺には、あいつが必要なんだ」
「あのお子さま体型の
なにがいいんだかー」

塚尾が右手をバタバタふりながら
そう言った。

顔とか体型じゃない。
俺は竹本といないと、
世界がまわんねぇんだよ…


「さっさと告白した方がよくないですか?
何もしないままなら、
村薗さんにとられちゃいますよぉ?」