だから、言えない



「あれ?
私に気づいてたんですね」
「…落っこちるよ」

私は体を引っ込めて、
首だけを外に出し、
先輩を見つめた。

浴衣姿で、
空を見上げる姿…
色っぽいなぁ…


「ことちゃん」

と言って、先輩はやっと、
私と目を合わせた。

「はい!」
「さっきのこと、
忘れてくれる?」

…え?さっきって、
あの庭であったことだよね?

忘れるって…なんで?

「俺、雰囲気に
流されちゃったみたいなんだよね。
あんなことしてごめんね」
「えっ!?
謝らないでください!
っていうか、
忘れてなんて言わないで……」

最後の方は小声だったから、
先輩に聞こえたかどうかはわからない。


村薗先輩はまた空を見上げた。
忘れてって言ったのは先輩なのに、
なんでその横顔は、悲しそうなの…?