だから、言えない



食事が終わって、解散になり、
塚尾さんは売店へ行ってしまったから、
私は一人で部屋へ戻ることにした。


佐山さんか村薗先輩を捕まえて、
庭で何を話したのか
聞きたかったけど、
二人ともさっさと消えてしまって、
できなかった。


部屋に戻ると、
特にすることもないから
窓を開けて外を見渡した。

宿の周りは低い建物ばかりで、
遠くまで見渡せる。

空を見ると、
私の家から見るよりも
星がよく見えた。


ふと、気配を感じて、
真横を見てみると、
隣の部屋の村薗先輩が、
窓辺に腰かけて、
空を眺めている姿が目に入った。

片足を立てて、
膝の上に肘をつき、
こめかみあたりに手をあてている。


うわぁ…かっこいいなぁ。
先輩はどの星を見てるんだろう?


そうだ、先輩、
私のこときづくかな?
呼んでみようか?

でも、今話しかけるのは気まずいかも…

最近避けられてるし、
さっき、あんなことがあったばかりだし…


でも、手を振るくらいならいいでしょ。


私は窓から身を乗り出した。
そして、手を伸ばしたとき、

「ことちゃん、危ないよ」

先輩が空を見つめたままそう言った。