だから、言えない



「塚尾さんだって、
私に嘘ついたでしょ?
村薗先輩に抱かれたとか…

さっき話したとき、
先輩は何もなかったって言ったよ」

まぁ、キスはしたって言ったけど…

「あたしか村薗さん、
どっちを信じるかは
竹本さん次第ですけど、
あたしはいつも、
ほんとのことしか言わないですよ」

塚尾さんは珍しく真面目な顔で
私にそう言った。

私は何も言い返さず、口を閉じた。

私は塚尾さんより、
村薗先輩を信じるけどね。


社長の部屋には、
村薗先輩と佐山さん以外もう集まって、
わいわい談笑していた。

飯田さんが、
こっちこっちと言いながら手招きしたので、
私は飯田さんの横に
座ることにした。

「温泉凄かったよね」

飯田さんがそう言った。

「竹本ちゃん、露天風呂の滝にあたった?」
「いえ」

実は露天風呂までいかずに出ちゃったから、
滝があったなんて知らないんだけど。

専務がその滝の中に入っていって
溺れかけたという笑えない話を、
飯田さんが爆笑しながら、
私に聞かせていると、
佐山さんが、部屋に入ってきた。


佐山さんは社長や専務に声をかけた後、
私の正面に座った。
いつもと変わらない様子だったけど、
村薗先輩とのキスを見られたから
なんだか気まずい…