だから、言えない



先輩はずっと池の鯉を見たまま、
静かにそう言った。

「え?す、好き?
佐山さんをですか?」
「……連、いいやつでしょ?」
「はい、
佐山さんはいい人ですよ」

いい人だし、
最近佐山さんといる時間も多くて、
いい感じだなとは思ったりもするけど…

「じゃあ、好きなの?」
「……え」

先輩の手はまだ繋がれたままだ。

そして、その手の握る力が
少し強くなったのを感じた。

「…答えられない?」
「あ、いや、えっと…
その…好きですけど…
恋愛という感じではなくて…」

私がそう言った瞬間、
先輩が私の両肩を掴んで、
顔を近づけた。

「それ、ほんと?」

先輩の顔は真剣で、
いつもの優しい顔とは違った。

「な、なんですか…?」

私が後退りすると、
先輩も私に詰め寄った。

「じゃあ、なんで、
忘年会の後、連と寝たの?
好きじゃないなら
そういうことしたらだめじゃん」