だから、言えない



なんで……
なんでこんな優しい笑顔を見せるの?

年末からずっと、
私を避けてたのに!

「行こう」

先輩はなぜか私の手を握って
歩きだした。

よく分からないまま、
村薗先輩に連れられ
庭へ向かった。


「わぁ、きれい」
「ね」

確かに、きれいな庭だった。
スリッパから外用の下駄に履き替え
庭に出ると、
涼しい風がほてった体を
冷ましてくれて、気持ちいい。

小さな池もあって、
鯉が数匹、気持ち良さそうに泳いでいる。


「あのう、先輩…」
「どうしたの?」
「塚尾さんはいいんですか?」
「なんで?」

先輩が不思議そうな顔で私を見つめた。