だから、言えない



それに、先輩を見たら、
塚尾さんとのこと思い出しちゃう…

「ん?ことちゃん?」

ペタペタとスリッパの音がして、
村薗先輩が私の真横に立った。

「な、なんですか…?」
「帯、ねじれてるよ」
「別にいいですよ。
面倒くさいので」

私はまだ先輩の方を見れず、
床を見つめていた。

先輩はため息をついて、
それからしばらく
何も言わなかったけど、
まだ私の横に立ったままだった。


そうだ、先輩は
塚尾さんを待ってるのかもしれない。

「塚尾さんなら
まだ時間がかかりそうですよ」

自分なりに気をまわしてみた。

「ことちゃん」
「何ですか?」
「ちょっと涼みにいかない?
ここの中庭すごくきれいだったから、
ちょっと散歩でも」

そう言われて、私はやっと顔を上げた。

村薗先輩を見ると、
いつもの優しい笑顔だった。

そして、ちょっと湿った髪の毛や、
浴衣の隙間からちらっと見える鎖骨に
ドキドキする。

「あ…えっと…」
「ん?」

先輩が目を細めて首をかしげた。