だから、言えない



あー!もう!
なにか別のことしなきゃ。
せっかくの社員旅行が!

あ!専務!
専務とオセロしたら、
気が紛れるかも。

村薗先輩はもう忘れる。
さっさと。


荷物をもって、女湯から出ると、
ちょうど男湯からでてきた村薗先輩と、
ばっちり目が合ってしまった。

「っ…」

私は反射的に顔を背けた。

もう…。
やっとのことで涙を
押さえこんだのに、
こんな時に限って…


そのまま、うつむいて
先輩の横を通りすぎると、
後ろから名前を呼ばれて立ち止まった。

「ことちゃん」

でも振り向きはしなかった。

どうせ、また
目を合わせてくれないんだし。