だから、言えない



振りかえると、
ツインテールの女の子が俺を見上げていた。

「こっちこっち」
「お、おう…」

よかった、助かった。
さっき会ったばっかりの俺のことを
気にしてくれる子がいたなんて!

ちょっと感動だぜ。

「名前、何?」
「あいり」

へぇ、あいりっていうのか。
小学四年生くらいかな?

「ふうちゃんは、
おじいちゃんの部屋が嫌いだから、
あそこに隠れよう?
あの部屋には、怖い人形があるの」
「ふうちゃん?」
「今鬼やってる子」

おじいちゃんって、
専務のことだよな?


「さーん…」


専務の部屋は一階の一番奥にあって、
写真や本で溢れていた。

古いガラス戸の棚の中に、
くるみ割り人形が雑に立て掛けてある。
怖い人形ってこのことかな。


「よーん…」


鬼のふうちゃんの声は
大分遠ざかったみてぇだ。

「ここに隠れよ?」

あいりが部屋の奥にある押し入れの扉を
ゆっくりと引いた。

しかし、そこには先客がいたのだった。