だから、言えない



「あら、ことかちゃん、
久しぶりね」
「あー、さむっ!
……あぁ、いらっしゃい!」

一人は細身でおとなしそうな40代くらい、
もう一人は茶髪で、
スポーツをしてそうな
ショートヘアーの30代くらい。

「長男のお嫁さんと、
こっちは娘です」

保子さんが説明した。
どうやら、茶髪が娘らしい。

「やっだ、イケメンじゃない!
お父さん、この人が佐山さん?」

娘さんが俺をまじまじと見た。

「うんにゃあ」
「モデルみたい!」

なんだこの家族は…
俺をイケメン扱いして。

俺は確かに背は高いけど、
自分がいけてるなんて
一度も思ったことねぇけどな。

だけど、俺は、緊張なんか忘れて、
この家族の中にいることが
なぜかほっとしていることに気づいた。

「ねーねー、
連くんはかくれんぼするでしょう?」

言い出しっぺの男の子が
今度は俺の手を引いた。

「おう」

おうって、
こんな29歳の大人が
キッズに混ざってかくれんぼとか
大丈夫なのか?
いや、大丈夫じゃねぇよ。

「ことかちゃん、
昼御飯はうちらが準備するからいいよ。
ご飯のあと、餅の準備手伝って。
今はこの子らと
遊んであげてくれる?」