だから、言えない



あーあー。
言い合ってる場合じゃないよ。
広がってく洗剤が、
見えないの?

「モップ取ってきますね」

私がそう言って、
動こうとしたとき、
村薗先輩が先に歩きだした。

「俺が行くからいいよ」

先輩、やっぱり私のこと見てくれない…

よし…

私はさっさと倉庫を出ていく村薗先輩を
追いかけた。

「村薗先輩!」

呼んでみたけど、
先輩は止まってくれない。
そのまま、追いかけて、
倉庫を出て角を曲がったところで、
私は先輩の上着の袖を掴んだ。

「待ってくださいよ、
村薗先輩」

先輩は正面を向いたまま
立ち止まった。

「あの、私、先輩を怒らせるようなこと
したでしょうか?」