だから、言えない



専務は引き出しの中から、
ティッシュの箱を出して、
机にぽいっと放り投げた。

空箱みたいだ。

「えぇ、帰りません」
「うんにゃあ、今年も来るかぁ?
餅つき」

専務はティッシュの箱を
また引き出しに戻した。

なんで捨てないのか気になる…。

「いいんですか?!」
「もちろんだよぅ。
去年は飯田くんも来たっけか?」
「あ、はい」

大晦日、専務の家では、
家族が集まって、
みんなで餅をつくんだよね。

実家には絶対帰らない、
一人ぼっちの大晦日を過ごす
私のことを気遣って、
専務が二年前からその餅つき大会に
呼んでくれている。

去年は飯田さんも一緒に行ったけど、
今年、飯田家は早めに奥さんの実家に帰るらしく、
参加しないみたいだ。

「うんにゃあ、
村薗くんや、佐山くん、
塚尾はどうするかぁ?」
「あたしは友達と年越しです」

と、塚尾さん。

「実家に帰ります」

と、村薗先輩。

「俺は、特に予定はねぇけど…」